始めに。

ED以降の話になります。
ネタバレしてますので、クリアしてない方は注意が必要です。

今回の主人公名は、参考意見から、エイト君です。

ではでは、はじまり はじまり〜♪

















草原に、僕の影が走る。
自分の弾む息が、心地よかった。
船を下りてから、なんどルーラで飛んで来ようか。
そう思い立ったのは、1回や2回ではなかった。
草原は風に揺れ、大地に新しい息吹を運んでいく。
この風は、僕の思いも、遠くまで運んでいってるのだろうか。
遥か、視線の先には、塔が見える。
僕と彼女が、初めて出会った場所。
視線をゆっくりと移すと、木の塀に囲まれた、リーザスの村が眼前に広がっていた。
僕は来たんだ。
彼女との約束を果たすために。
そして、僕の想いを伝えるために。
村に向かって、僕は歩き出した。



走れ! 走れ! 明日のために!

進め! 進め! 自分のために!











〜自分のために〜












扉はゆっくりと開かれた。
僕は、たった一人城を出る。
冷たい雨の日も、花咲き乱れる日も、うだるような暑い日も、さわやかな風が吹く日も、
行く月日を過ごした、僕の家と呼んでおかしくない場所。
トロデーン城。
門を越えたあと、まだ開かれている扉の向こうに、ゆっくりと振り返った。
何万回も見上げたであろう、白く美しい城。
そのテラスに人影が見えた。
こんなに離れていてもわかる。流れるような黒髪。
間違いなくあの姿はミーティア姫。







僕は、姫の想いに答えることはできなかった。








それは、ようやくトロデーン城も平穏を取り戻し、ミーティア姫の結婚式逃走劇もひと段落着いた頃だった。
「恐れながら、トロデ王様。折り入ってお願いがあります。」
僕は、王の間で片膝を付き、深々と頭を垂れると、そう言った。
「顔をあげよエイト。して、どうしたんじゃ。」
玉座に座するトロデ王、その隣に控えるミーティア姫。
「私に、暇を与えてはいただけませんでしょうか?」
単刀直入に、僕は切り出した。まっすぐに、トロデ王を見つめて。
「なんじゃと!暇とな。」
トロデ王は、玉座から飛び降り僕を見た。
無理も無い。国の兵の長であり、武の象徴でもある近衛隊長を辞めさせてくれ。
と、言っているのだから。
「近衛隊長にまで、王に取り立てていただき、今でも身に余る処遇です。
・・・・・・しかしながら、自分は、その恩義に報いる事が出来そうにありません。
任を解き、暇をいただけませんでしょうか。」
僕は、もう一度平伏し、トロデ王に懇願する。
誰も音を発せず、トロデ王の言葉を待った。
「ワシは、エイトがこの国、いや世界を救った僅かばかりの礼をしたまでじゃ。
暇がほしいのなら、いくれでもくれてやるぞい。」
顔を上げれば、そこには笑顔のトロデ王が立っていた。
「トロデ王様。」
「エイトよ。お前はワシらを元に戻す為に全力を注いでくれた。
それほど、余の為に、姫や国の為に頑張った者の願いを聞き届けない者がおるじゃろうか。」
トロデ王は、僕の肩に手を置いた。
「暇はやるが、エイトはいつまでもワシの家臣じゃぞ。それはわすれてくれるな。」
「ありがとうございます。」
僕はもう一度、王に頭を下げた。
「しかしじゃ。どうして暇が欲しくなったんじゃ。」
「約束を果たそうと思いまして。向こうはもう忘れてるかもしれませんけれど。」
旅の途中、僕と王が交わす何時もの口調でそう答えた。
「エイトよ。餞別という訳ではなのじゃが、船を持っていくが良い。
わしらが乗っていた船じゃ。誰も使ってはおらんが、整備だけはしておいた。
ルーラだけでは、旅は味気ないじゃろうて。」
「ありがたき幸せに存じます。」
僕は、この王に仕えた事を、誇りに思う。






近衛兵の仲間達や、お世話になった城のみんなに挨拶をしていった。
気がつけば夜もとっぷりと暮れていた。
自室に戻り、部屋の片付けや、旅立つ準備を始める。
ランプの火が照らす部屋の中で、懐かしいガラクタや、古い本も見つける。
それらを片付けながら、部屋を見回した。
視線なのかに壁にかけた剣が入る。
ラプソーンという強大な敵に立ち向かった、なんども窮地を救ってくれた剣。
僕はそっとその鞘に触れる。
ドンドンドン!!
ドアが叩かれ弾ける様に、僕は剣から離れ、ドアに向きかえる。
「どなたですか?」
「ミーティアです。」
僕の胸は、ドキリと、大きく鳴った。


「夜分にすみません。今日でないとエイトとはお話できませんから。」
うつむいたまま、椅子に座ったミーティア姫。
その対面には、僕も椅子に座っていた。
会話はなく、ただ時間だけが音も無く進んでいった。
ランプの芯のこげる音が耳に聞こえてくるだけ。
「何かお飲み物でもつくりましょうか。大した物はありませんが。」
居たたまれなくなって、僕は思わずミーティア姫に言うと席を立った。
「エイトは、ずっとミーティアと一緒にいてくれるのではないのですか?」
姫は、そう言うと僕の背中に抱きついた。
「姫、僕は・・・・・・。」
オレンジ色の光に照らされた天井を見上げる。
そこに何かがあったわけでもない。
答えは胸に最初からあった。
「僕は、姫を、貴方の事をとても大切に思っています。
でも、僕にはミーティア姫以上に思ってる人がいるんです。」
僕は思いを一気に言い切った。
「その人は、エイトの事を好きと言ったのですか?」
背中越しに震える声。
「いいえ。僕の片思いですから。向こうは全然そんな気ないかもしれません。」
これは本心だ。
いくら僕が相手を思っても、彼女の心はわからない。
「それでも行くのですか。」
「はい。振られたら笑ってください。」
クスッと小さく笑う声が聞こえて、
「エイトを振るような女性がいれば、その方はよほど男性の見る目がない方です。」
僕の顔の温度が上がる。
美しい姫にそんなこと言われて嬉しくないはずはない。
「僕は、そんな大した男ではないですよ。」
あわてて取り繕う。
「エイト、もし、もしも振られたら、ここに帰って来てくださいね。ミーティアはいつまでも待ってますから。」
ミーティア姫は僕の背中から離れると、僕の前にくるりと回る。
しなやかな黒髪が目の前で踊る。
「私ってば、悪い女ですね。エイトが振られるの期待しちゃうなんて。」
舌を見せ苦笑いを浮かべるミーティア姫。
「姫。」
ミーティア姫は僕の顔を見つめ。
「エイト。」
ミーティア姫は僕の両肩に手を置くと、自分の方へ体を引き寄せた。
ランプの明かりに照らされて、姫の顔が迫る。
一瞬だけ影が重なり合う。
「行ってらっしゃい。エイト。」
そう告げると、ミーティア姫は駆け出し、ドアの向こうに消えた。

キスされた。

去り際の姫の顔がしばらく頭から離れなかった。
泣いていた。
でも、僕に姫を追いかけてその涙を止める手立ては無い。
僕が、なによりも、その涙の原因なのだから。



あっという間に1週間が過ぎて、いよいよ僕がこの城を離れる日が来た。
大きな荷物は船に積み込んである。
すぐに、必要なものだけを入れたかばんを肩にさげる。
朝日が零れる城の廊下を一人歩く。
音の無い静かな澄んだ空気。
自分の足音だけが、耳に届く。
僕の視線の先に、ここに着たばかりの幼き日の僕。
城の兵のみんなに、兵法を教えてもらっている僕。
兵として認められた日の僕。
そして、この城に戻ってきた日の僕。
浮かんでは、駆けて行き、そして消えていく。
懐かしい日々。
たくさんの思い出を胸に僕は今日旅立つ!








船は、潮風に吹かれ僕の心を透き通らせていく。














「リーザス村だ。」
土を踏む音と、自分の呼吸を聞きながら、ゆっくりと村の中へ入っていく。
ポルクとマルクが、今日も変わらずに村の中を走っている。
僕の姿をみつけると、
「お兄ちゃん久しぶり〜」
二人がかけよってくる。
「ゼシカは、いるかな?」
「うん、お姉ちゃんは、部屋にいるよ。この時間だと、大体部屋の窓から外みてるよ。」二人が答える。
「ありがとう」
僕は、笑顔で二人に礼を告げると館へと道をすすむ。
少し小高い丘の上に屋敷はある。
その窓の一つから、外を眺めている一人の女性の姿が見える。
ゼシカだ。
僕は、大きく手を振り、
「ゼシカー!」
声を上げた。
両手をぶんぶんふって、自分が来た事を示す。
ハッと、こちらに気がつくゼシカ。
その瞬間窓から姿が消える。
「・・・・・・・・・。」
外まで聞こえてくるけたたましい、足音。
ドアが勢い良く開かれ、そこからゼシカが勢い良くこちらに向かって走ってくる。
大きな胸が揺れる姿を見て、ちょっと目のやり場に困った。
「な、なんで、エイトがいるの?」
大きく息を整えゼシカが僕に言う。
「約束。」
僕は笑顔で答える。
「え?」
きょとんと、目を見開くゼシカ。
覚えてなさそうだ。
「ゼシカと約束しただろ。」
全部終わったら船で旅にでようって。
「なにを?」
明らかにゼシカの頭に?マークが飛んでいる。
「やっぱり忘れてる。」
ふう。と僕はため息をついて腕を組む。
「やっぱり。ってなによ。大体エイトとした約束なんか・・・・え!?まさか覚えてたの! あんなの約束でもなんでもないじゃない。私が勝手に言っただけなのに。」
どうやら思い出してくれたようだ。
「トロデ王に船は貰ってきたんだ。一緒に来てくれるかい?」
僕は右手をゼシカに差し出した。
「断ったらどうするつもりなの?」
そういいながら、ゼシカは僕の右手に手を重ねる。
「それは考えて来てなかった。」
あいた左手で、頬をかく。
ほんとに考えてなかった。断られる事は。
「あのねぇ。」
ゼシカは、あきれたといわんばかりの表情をつくる。
「折り入ってお話があります。」
真顔でゼシカを見つめなおし、右手にチカラを篭める。
「クス。旅のお誘いですか?」
微笑んで、握り返してくるゼシカ。
「いってくれますか?」
少しだけゼシカを引き寄せる。
「喜んで。あなた意外と誰と旅にいきましょうや。行きましょう今宵も。」
左手を、オーバーに伸ばし、ゼシカは答えた。
大体、まだ夜じゃないし。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
互いに見詰め合う。が、だんだん頬が緩んでくる。
ぜしかも同じようだ。頬の筋肉が細かく動いている。
「「ハハハハハッ」」
耐え切れず二人の笑い声がかぶる。



ひとしきり笑い終えて。
「ゼシカ。」
なんとか顔の筋肉をなだめて、僕はゼシカを見た。
「ん?」
僕を見上げる。二人の距離は抱き合うくらいに近い。
「好きだ。」
「え?!」
まじまじと僕を見つめるゼシカ。
「私?」
ゼシカは顔を赤らめて自分を指さす。
「ほかに誰がいるの?」
今度は僕が呆れる番だ。
ゼシカって意外とそういうのは鈍いのか?
大体この空気で読めそうだと思うのだけど・・・・。
「ありがと。私もエイトが大好きよ。」
目を細め微笑んで、ゼシカはそう答えてくれた。
「僕こそ、ありがとう。」
風が、髪をなでる。
ゼシカの髪が流れてるのを、少しだけ見送る。
僕の手がゼシカを抱き寄せる。
ゆっくりと、ゼシカは瞳を閉じた。
僕と、ゼシカの影が重なっていく。



「じゃあ、いきましょうか。」
僕とゼシカは手を繋いで、村の入り口へと、お互い歩幅をあわせながら進んでいく。
「いくってどこへ?」
「どこでもいいじゃない。エイトとなら。」
ニヤリと、いつもの強気な笑みがゼシカに浮かぶ。
「じゃあしゅっぱーつ!」
ぼくの腕を引きずり、ゼシカは、息揚々と村の外に歩き出す。
「え!?もう行くの!?ゼシカの準備とかは!?
ほら、お母さんとかに挨拶とかこれじゃ、また家出同然というか、消息不明ていうか・・・・。」
ぼくがしどろもどろに答えている隙に、
「ポルク、マルク!」
ゼシカは、門の近くで遊んでいる、ポルクとマルクに声をかける。
もちろん、僕の腕は掴んだままだ。
「お母様に、ゼシカはお世話になりました。また家出します。心配しないでください。と伝えておいて。」
それだけ告げると、ゼシカは嬉しそうに、僕の腕に自分のうでをからませる。
「おねえちゃん、どこへ行くの?」






「世界で、まだ誰もみたこともないところへ。いまから二人で行ってくるの!」
ポルクとマルクに、笑顔で答えた。






「では、いってみますか!世界の果てまで!」
お互いを見つめあい、手を繋いで駆け出した。この青い空の下を。
果てしなく広がる世界を。




終わらない詩(うた)を歌おう。

二人で、いつまでも。










Fin











作者言い訳。

歌からネタをあみだすのはやめましょう<自分

はい。今回のタイトルからわかりますように、
ネタの案はTOKIOの「自分のために」を聞いてて考え付きました(笑)

ちょっと、今回はミーティア姫可哀相な役回りでしたが、主ゼシの為に泣いてもらいました(苦笑)
書いてて思いましたが、このエイト君はえらい強気ですなぁ(笑)
やっぱり主人公はカッコよくないとね。


腰痛のアッカでした(笑)


管理人コメント
アッカさん腰痛の中投稿してくださってどうもありがとうございました(笑)
歌からネタをあみだすことは僕もしょちゅうありますよ〜

今回はED後のお話ですね。ミーティアが主人公を愛する気持ちも、ゼシカが主人公を愛する気持ち、その逆もよく伝わってきました。 非常に勝手な解釈で申し訳ないですが、この作品は愛がテーマかと。なので背景はパンジーにしてみました。 花言葉は、私を想ってくださいとか純愛です。 ※参照 花言葉通信
やっぱり主姫もいいですが、主人公とゼシカが結ばれるお話はハッピーになれます。






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