主ゼシ同盟投稿SS
心の声
(1幕2番で成り立つドラマ)
作者:クリシュ
原作:ドラゴンクエスト[ 空と海と大地と呪われし
姫君
登場人物:
エイト
ゼシカ
それはエイトがアルゴンリングを手にした後の夜の事
だった………
<1幕1番>
とある町の宿屋の外、エイトが一人で散歩をしている
ここで話される台詞は、実際に話しているわけではなく、エイトの「心の声」である
エイト:僕が初めてあの娘を見たとき、
彼女は新たな人生を夢見るようだった
心の中には炎が燃え
待ちくたびれそうだった
抑えつけられた想いを解き放ち
「生きていたい」と彼女の目は語った
そして自分の道を選んだ
「何も与えてくれなくていいから、何も禁じないで」
「自分の道を歩ませて」
そんな彼女に
僕は前から惹かれていた
そして今、自分も彼女のように
割り切らなければならない
・ ・・・・・・
運命を押しつけてくるこのリング
心の願いを抑えつけてしまう
「お前も王家の者」
「運命を受け入れ、先祖の決めた道に従え」
そう語っている
先祖の望み
今自分が仕えている王、そして姫の望みでもあるだろう
それに応えない自分はやはり失格なのか
いや、それでもいいさ
自立が怖いのか
女であるあの娘にだってできたのに
男である自分が何をためらう
こんなリング
心の底から願っている事を封じてしまうなら
投げ捨ててしまえ
今までだって
結局自分で進んだじゃないか
これからだって
あの娘さえいればやっていける
・ ・・・・・
僕は決めた
最後の決戦、生きて帰れれば
その時は身分も地位も捨てて
彼女に想いを伝える
彼女さえいれば
これからどんなことがあっても乗り越えられる
そう思うんだ
だから、僕は言わなければならない
「ゼシカ、君を愛している」と
エイトは宿屋に入っていく。
<1幕2番>
宿屋入り口の上のバルコニー。
ゼシカが一人で星空を見ている。今回も話しているのは彼女の「心の声」である。
ゼシカ:私、今まで何をしてきたのかな
もちろん、意味はあったと思う
だって自分が正しいと思ったことをしたもの
これからもそう生きていきたい
でもそしたら
私が最も愛する人を不幸にしてしまうかもしれない
・ ・・・・・
エイト、なぜあなたはエイトなの?
あなたがあのリングをもらった時
一瞬にして大きなものを得たわよね
王家の者であるという誇り高い証
そしてそれと同時に
今まで守ってきた姫と結婚できること
あなたは、この上ない幸せを手にしたのよね
でも、あなたがもし本当に私の愛した人なら
そんな事に心を満たされないはず
あんな形で家出した私を暖かく迎え入れ
今まで冒険をしてきた彼なら
そんな“贈り物”に目がくらまないはず
でも、彼が本当に姫が好きだったら・・・
そしたらもちろん
私は死ぬまで独身で暮らすわ
あの時だって一人で家をでたのよ
できないはずはない
でも、今の私、エイトがいなければ
挫けてしまいそう
かっこ悪いわよね
私は「強い女」として自信があったのに
今までどんな辛い冒険だって闘い抜いたのに
恋の前に敗れてしまいそう
・ ・・・・で も負けてはいけない
これは今まで以上に激しい戦い
これに勝利するには
プライドを振り切って
彼の前にひざまずき
気持ちを素直に伝えられる程強くて勇敢にならなきゃ
「エイト、あなたが傍にいないと、私、もう闘えない」
「あなたを愛しているわ」
そういわなきゃ
エイトがバルコニーへ出てくる。
ゼシカは彼の方へ向き、何か言いたそうにしているが、声がでない。今回も「心の声」のみが話す。
ゼシカ:今よ、今こそ気持ちを伝えなきゃ!
でもどうしよう、思うように言えない・・・
助けてエイト!
聴いて、私の「心の声」を!
ゼシカはかがむように体が床につぶれる。
すると、エイトもかがみ、ゼシカの手を取る
ゼシカはエイトに泣き付く。2人は立ち上がり、エイトは泣いているゼシカを抱きしめる。
エイト(やはりこれも「心の声」):
ゼシカ、泣いてもいいんだよ。
涙は生きている証
やっぱり君は「生きている」んだね
・ ・・・・・・
愛って、お互い感じていれば
言葉なんてなくても伝わるものなんだね
お互い、何も言っていないのに
「心の声」だけで通じ合っている
・ ・・・・・・・
大丈夫、もう君を離さないからね
(ここだけ、2人とも実際に声を出す)
エイト:ずっと。
ゼシカ:うん。ずっと。
月と星の光が2人を照らす。