あなたの明るさに



ある日の夜の出来事―
リベルたち一行は馬車で仲良く話をしていた。
宴のような馬車。 こんなに騒いで魔物に襲われやしないかと思うほどにはしゃいでいた。ある者は踊り、ある者は歌い、ある者はフローラが作った特製料理を 食べていた。
仲間と戯れるこの時間を皆、楽しみにしている。旅の疲れなど忘れてしまいそうな楽しさだ。 その、いつもの様子を少し目を細めて見るフローラ。 
しかし、いつもと違うことに彼女は気付いた。いつも元気にはしゃいでいるレックスがそこにいなかったのだ。

フローラがポツリと呟いた。
「レックスったらまだあのことを気にしているのかしら…」

それは今日の出来事
魔物との戦闘中にレックスがドジった。
最近レックスは戦闘中にミスをすることが多い
そして、ミスをする度にレックスは落ち込んでいた。
特に今日はレックスのミスでフローラが怪我をしてしまったので深く落ち込んでいるようだった。

フローラがリベルに言った。
「あなた 私ちょっとレックスの所に行って参ります。」
「わかったよフローラ よろしく」

馬車から少し離れた丘の上で、膝に腕をまわして、月を眺め、レックスは涙を流していた。

また迷惑をかけてしてしまった……
僕は本当に強くなれるかな?
みんなをちゃんと守れるのかな?


フローラは涙を流すレックスの傍に行きそっと話し掛けた。
「ねえレックス まだあのことを気にしてるの?」
「か、母さん」
慌ててレックスは涙を拭った。
「隣に座ってもいい?」
「う、うん」

レックスの横にフローラは腰を下ろした。
「ねえ、レックスまだあのことを気にしてる?」
「だって母さんに怪我させちゃったんだよ?」
レックスに彼女は優しく微笑んだ。
「母さんなら大丈夫だわ」
母からそう言われてもレックスは俯きながら言った。
「でも、みんなに迷惑をかけちゃったし… いつもみんなに迷惑かけてばかり……」
レックスの目からまた涙が流れ出した。
「母さん……僕…僕不安なんだ 僕は強くなれるの?」

涙を優しく拭ってレックスの瞳をじっと見つめてフローラは言った。
「レックス いい? 本当に強いって言うのはね、自分に負けないことなの」
「自分に……負けないこと?」
「そう、自分に負けないこと 
 失敗しても挫けないで前を向いて歩ける
 これが本当に強いってことだと、母さんは思うわ」

「そっか……自分に負けないことか… うん、強いってこと分かったような気がする」
フローラはニッコリと微笑んだ。
「そう よかった じゃあ涙を拭ってみんなのところに戻りましょう」

「うん そうだね!!」
そう言ってレックスは涙を袖でゴシゴシと拭った。


「ふふふ 母さんは元気があるレックスが大好きだわ」
レックスはヒョイっと立ち上がり言った。
「じゃあ僕ずっと元気でいるよ やっぱりくよくよしても仕方ないよね
 元気出して頑張らなきゃ!」


タララタッタッタ〜!!
レックスはいつもの明るさを取り戻した!!


フローラは優しく微笑む。
「さあ一緒に戻りましょ」
「うん!」
「僕ね強くなって母さんを守るんだ!」
愛しさでフローラはレックスをぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう…レックス 嬉しいわ」

二人は手を繋ぎ微笑みながら馬車へと戻っていった。


あなた……
私達の子供はなんて可愛いんでしょう
あの子の瞳はあなたに似てるわ
優しい瞳をしている

きっとあの子もあなたのように強くなると思うの

あの子の太陽のような明るさに私は何度助けられただろう

レックス……私達の子供に生まれてきてくれてどうもありがとう




あとがき
主フロの勇者が落ち込んだバージョンを書いてみました。
それにしてもレックスの立ち直りがかなり早いですね(笑)








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