あなたはあなたのままで





あ る日の夜の出来事―
リュカたちはいつものように馬車で仲良く話をしていた。
だが、一つだけいつもと違うところがあった。
いつも元気にはしゃいでいるレックスがそこにいなかった。




ビアンカが呟いた。
「まだあのことを気にしているのかな?」


それは今日の出来事――
魔物との戦闘中にレックスがミスをした。
そんなに大したミスではなかったのだがレックスはあれから元気がな かった。

「ごめんリュカ 私ちょっとレックスのところに行ってくるね」
「わかったビアンカよろしく頼む」

ビアンカはレックスを探しに行った。




レックスは丘の上で月を見上げながら涙を流していた。

また失敗してしまった……
こんなことじゃ父さんのように強くなれないよ……
強くなりたい
強くなってみんなを守らなきゃ


レックスを見つけたビアンカはそっと微笑み傍に寄った。
「ねえレックス まだあのことを気にしてるの?」
「か、母さん」

驚いて顔を上げたがまた顔を俯かせた。
「だってみんなに迷惑をかけちゃったもん
 いつもみんなに迷惑かけてばかり……」

レックスが潤んだ瞳でビアンカに尋ねた。
「ねえ母さん 僕は父さんみたいに強くなれるかな?」

それを聞いたビアンカは……
「ハハハハ」


私は思わず笑ってしまった。
小さいころのリュカもよくこんなこと言ってたっけ

リュカも父さんみたいに強くなれないって言ってよくベソをかいてた な
でも、あのリュカがあんなに逞しくなっちゃったのよね


笑っているビアンカにレックスは頬を膨らませて怒っている。
「も〜 笑い事じゃないよ・・・」
ビアンカは必死に笑いを堪えて言った。
「ごめん、ごめん ちょっと父さんの小さい頃を思い出しちゃってね
 小さい頃の父さんも、父さんの父さん、つまりパパスおじいちゃん に憧れてたのよ
 それでね今のレックスみたいに父さんみたいに強くなりたいって 言ってたわ
 父さんはね、とっても泣き虫だったのよ 
 そんな父さんがあんなに強くて逞しくなれたんだから大丈夫
 レックスも父さんみたいになれるわよ
 だから自信を持ちなさい」

レックスはそれを聞くと表情が一気に明るくなった。
「わかった 僕、自信持つよ
 ねえ、母さんは父さんのこと好き?」

ビアンカは目を細めて微笑んだ。
「ええ、大好きよ この世の誰よりもね」

「僕も父さんのこと大好き
 母さんのことも大好きだよ
 だって父さんと母さんはとても優しいんだもん
 僕が想像していた通りの人だったよ……」

ビアンカは優しい笑顔でレックスを呼んだ。
「ありがとう レックスおいで」
そう言いビアンカは両手を広げた。
そしてレックスがビアンカの胸に飛び込みビアンカはレックスを抱き しめた。


母から伝わる温もり 
それはとても優しくて
ずっとこのままいたいような
心地いい温もりだった


「母さん…」

ビアンカは抱きしめる腕に力を込めた。
「レックスはレックスでいいと思う」

レックスは顔をあげて訊いた。
「え?どういうこと?」

「レックスはレックスのままでいいの」

「え〜?どういうこと〜? わからないよ〜」

プっと頬を膨らませるレックスの髪をビアンカは優しく撫でた。
「そうね まだ難しいかもね けど、いつかわかる時が来るわ
 さあ、みんなのいる所に戻りましょ」
「うん」
二人は手を繋ぎ馬車へと戻っていった。







いつかきっとわかる時がくる


私がレックスのように悩んでいた時リュカは私に言ってくれた。

リュカ……あの言葉……今でも大切にしてるよ


――ねえ、ビアンカ 
本当の強さって何だと思う?
戦いで負けないこと?
泣かないこと?
それは違う
本当の強さは……僕にもわからない
だから二人で答えを見つけようよ

けど、一つだけビアンカに言っておくよ
ビアンカはビアンカのままでいい――

この言葉が無理に強くなろうとしていた私を楽にしてくれた。


リュカは私の大切なかけがえのない人
大切で愛しくて
リュカの傍から離れたくない
いつまでも彼と一緒にいたの
魂になっても結ばれていたい









ねえリュカ
あの子本当に小さい頃のリュカに似ている
正義感が強くて
でも、少し泣き虫で
可愛くて

私達の子供を見ていると
自分達の小さい頃を見ているようで
何だか不思議な気分だね


守っていかなきゃね
私達の可愛い子供達を

早く世界を平和にして
家族仲良く暮らしたいね






あとがき
最後はおまけのような感じです
寿様とBQ5様に投稿したものを少し書き直しました。
家族愛をテーマとして書きましたが…… 主人公の出番がないですね
まあ、主人公家族は愛で溢れています〜
ちなみに主フロ家族バージ



ョンもあります




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